ビレイ用のHMS型(洋ナシ型)安全環付きカラビナにはいろいろな種類があります。
ただ、どのカラビナにもメリット・デメリットがあって、「これだ!」という製品にはなかなか巡り会えませんでした。
そんな折、カンプ社から「個人的にはほぼ完璧!点数をつけるとしたら97点!」な安全環付きカラビナが発売されました。
それが「アトムビレイロック」です。
なめらかなノーズ、セーフティマーク、反転防止機構、サイズ感、デザイン、どれを取っても個人的にはほぼ完璧です。
初心者さんから経験者さんまで強くおすすめできます!
この記事では、「アトムビレイロック」の良いところ、イマイチなところを正直にレビューしていきます。
ビレイ用の安全環付きカラビナを探している方のお役に立てるはずなので、当てはまる方は、ぜひ記事を読み進めてみてくださいね。
それではいってみましょう。
カンプ アトムビレイロックの外観・特徴
「アトムビレイロック」はカンプ社が企画・販売している安全環付きカラビナです。
この項目では、アトムビレイロックの外観・特徴を見ていきます。
外観(表・裏・細部)
まず、外観は以上のとおりとなっています。
カラーは、ボディがガンメタル、安全環がレッドです。
ノーズの形状はこんな感じ。
なめらかで引っかかりにくいです。
ノーズの形状を他社の古いカラビナと比べてみました。
アトムビレイロックに比べ、他社の古いカラビナ(右)のほうが角度が急なことがわかります。
角度が急だと引っかかりやすいんですよね…。
実際に使ってみても、アトムビレイロックのほうが引っかかりにくいと感じました。
細部印字は以上のとおりです。
画像タップで拡大できるので、気になるところがあったら拡大してみてください。
次に、アトムビレイロックの特徴を解説します。
スクリュータイプのHMS型安全環付きカラビナ
まずアトムビレイロックは、おもにビレイや懸垂下降に使用する、スクリュータイプのHMS型(洋ナシ型)安全環付きカラビナです。
ロック部にセーフティマークあり
ロック部にはセーフティマックが印字されています。
これがポイントのひとつです。
セーフティマークにより、ロックが不十分であることをビレイヤー・クライマーともに視覚的に気づけます。
スクリュータイプのHMS型(洋ナシ型)安全環付きカラビナって、ロックしたゲートを”カチカチ”っとやることでしかロック確認ができなかったので、セーフティーマークは革新的な機能です。
セーフティマークの登場により、ヒューマンエラーのリスクは確実に低減したと言えます。
そのセーフティマークがアトムビレイロックには印字されています。
反転防止機構を搭載
次に、アトムビレイロックには反転防止機構が備わっています。
反転防止機構とは、ビレイ時に安全環付きカラビナを常に正しい位置で使うためのものです。
カラビナは横方向の荷重に弱いので、常に縦向きで使う必要があります。
ところが、反転防止機構のない安全環付きカラビナでビレイしていると、カラビナが横を向いてしまうことがたまにあるのです。
横向きにならないよう注意しても限界があるので、正しくビレイするには反転防止機構が備わっている安全環付きカラビナの使用を推奨します。
さて、アトムビレイロックの反転防止機構の説明に戻ります。
アトムビレイロックの反転防止機構は、カラビナの中心部に向かって開く「内開き」方式です。
反転防止機構を開くときの負荷は普通なので、そんなに力は要りません。
ストレスなく操作できます。
ちなみに、反転防止機構を開くときの負荷は、アトムビレイロックよりもエーデルリッド社のHMSストライクFGのほうが硬めです。
ですので、操作感はアトムビレイロックのほうが優れています。
ロクスノ095号で紹介された
アトムビレイロックは、クライミングマガジン「ROCK&SNOW 095号」の”この春チェックしたい2022注目のギアたち”という企画で紹介されました。
その記載の一部を以下に引用させていただきます。
独自のスフィアロックノーズ形状は安全性向上とともに、大きなゲート開口部との組み合わせによりロープやウェビングをクリッピングしやすく、特徴的なボディ形状は手の小さな人でも操作が容易な形状となっている。
ロープの支持面は13mmと広くハンドリング性に優れ、それによりロープへの負担も軽減。
またロック機構には安全性向上のため、セーフティマークを施し視認性を高めている。
ROCK&SNOW095号 18ページ
以上で「カンプ アトムビレイロックの外観・特徴」の項目をおわります。
カンプ アトムビレイロックの強度・サイズ・重さ
この項目ではアトムビレイロックの強度・サイズ・重さを見ていきます。
強度
アトムビレイロックの強度は以上のとおりです。
サイズ・重さ
- 縦:約11.8cm
- 横:約7.4cm
アトムビレイロックのざっくりした大きさは以上のとおりです。
手のひらにのせるとこれくらいのサイズ感になります。
ゲート開口幅(ゲートクリアランス)は約2.4cm。
フレームボディトップの幅は約1.4cm。
ノーズの幅は約0.6cmです。
重量は約84gでした。
以上で「カンプ アトムビレイロックの強度・サイズ・重さ」の項目をおわります。
カンプ アトムビレイロックの使用レビュー
ここからは、アトムビレイロックを使ってみて感じたことを書いていきます。
サイズがちょうどよく、扱いやすい。
まず、サイズがちょうどよく、扱いやすいです。
最初は「少し大きいかな?」とも思ったのですが、問題ありませんでした。
手にフィットする持ち心地です。
反転防止機構がついていると、カラビナの内径はどうしても手狭になります。
その分、扱いづらくなったりすることもあるのですが、アトムビレイロックはその大きさで内径の手狭さをカバーしています。
ギアラックやビレイループからの着脱、ロープのセット・取り外しまでスムーズに行えました。
(エーデルリッド社のHMSストライクFGは、小さくて少し扱いづらいと感じました…。)
カラーがクールで使っていて心地いい。
次に、カラーがカッコイイです。
クライミングギアって独特のカラーリングのものが多いのですが、アトムビレイロックのカラーはシックに落ち着いています。
ゆえに使っていて心地いいです。
反転防止機構が扱いやすい。
次に、反転防止機構が扱いやすいです。
以前使っていたブラックダイヤモンド社のグリッドロック スクリューゲートは、反転防止機構がカラビナの外側に向かって開く「外開き」方式だったのですが、個人的には微妙でした。
グリッドロック スクリューゲートの反転防止機構をビレイループにセットするには、カラビナのゲートを開けなければなりません。
また、取り外すときには反転防止機構がビレイループに引っかかることが多々あり、それらがストレスでした。
結局、グリッドロック スクリューゲートは使わなくなりました…。
一方、アトムビレイロックの「内開き」方式の反転防止機構はいい感じです。
機構が独立しているため、ひとつひとつの動作を確実に行えます。
反転防止機構をビレイループにセットするのもスムーズです。
セーフティマークがうれしい。しかし…。
スクリュータイプのHMS型(洋ナシ型)安全環カラビナの注意点は、安全環を締め忘れることです。
手動で締めるためヒューマンエラーが起きやすいのがデメリットとなります。
そんな中、最近ではセーフティマークが入った安全環付きカラビナが多く販売されるようになったのは非常にありがたいです。
アトムビレイロックもその流れに乗り、セーフティマークが入っています。
締め忘れに気づきやすく、助かります。
しかし一点だけ欲を言うと、もう少し明示的でわかりやすいセーフティマークだとさらに良かったと感じました。
上は、ペツル社の安全環付きカラビナとの比較画像です。
ペツル社の安全環付きカラビナのセーフティマークは真っ赤で、より明示的です。
わかりやすさでいうと、ペツル社の安全環付きカラビナに軍配が上がります。
「セーフティマークがもう少し明示的だったらさらに良かった」
重箱の隅をつつくようですが、以上がアトムビレイロックの少しだけ惜しいポイントでした。
以上、「カンプ アトムビレイロックの使用レビュー」でした。
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筆者のビレイ用安全環付きカラビナ遍歴
この項目では、筆者のビレイ用安全環付きカラビナ遍歴を紹介します。
1個目:BD社 ロックロック
最初に使っていたのはブラックダイヤモンド社の「ロックロック スクリューゲート」です。
当時はアイスクライミングにも興味があり、グローブをしていても扱いやすい大きめの安全環付きカラビナを選びました。
しかし、一般的なリードクライミング(シングルピッチのスポーツクライミング)で使うには少しだけ大きすぎました。
手への収まりがイマイチだったため、次に紹介する「グリッドロック スクリューゲート」に変更しました。
2個目:BD社 グリッドロック スクリューゲート
次に選んだのはブラックダイヤモンド社の「グリッドロック スクリューゲート」です。
これは、反転防止機構がついた安全環付きカラビナの先駆け的な製品だと私は思っています。
安全性が高く、良かったのですが、「外開き」方式の反転防止機構が個人的にどうも使いづらかったです。
このときはマルチピッチにも力を入れていたため、「結局のところ、シンプルな安全環付きカラビナがもっとも使いやすいのでは?」と考え、次に紹介する「アタッシュ」に変更しました。
3個目:ペツル社 アタッシュ
次に選んだのはペツル社の「アタッシュ」です。
これはとても気に入り、3年くらい使い続けていました。
軽くてコンパクトで、手にフィットする持ち心地です。
赤いセーフティーマークが入っている点もgoodでした。
やはりマルチピッチで使うならシンプルな安全環付きカラビナのほうが扱いやすいと感じました。
しかし、実際のところ、用途の多くはシングルピッチのスポーツクライミングです。
使っているとだんだん「反転防止機構のついた安全付きカラビナのほうがより安全なビレイが行える」と考えるようになり、次に紹介する「HMSストライクFG」に乗り換えました。
関連記事 アタッシュの詳細レビューはこちら
4個目:エーデルリッド社 HMSストライクFG
次に選んだのはエーデルリッド社の「HMSストライクFG」です。
これはアトムビレイロックと同じタイミングで購入し、比較しながら使っていました。
HMSストライクFGはアトムビレイロックよりも約12g軽く、コンパクトなHMS型(洋ナシ型)安全環付きカラビナです。
そのぶん、アトムビレイロックと比べ取り扱いがガチャつく(小さいからか引っかかりを感じることがある・反転防止バネが硬い)ことがあったため、最終的にはアトムビレイロックを選びました。
HMSストライクFGは、PASなどのセルフビレイコードの先端につけるのが良いかもしれません。
それなら反転防止機構を活かせます。
関連記事 PASの詳細レビューはこちら
そんな背景を経てアトムビレイロックにたどり着きました。
ビレイ用カラビナ選びの参考になれば幸いです。
カンプ アトムビレイロックと一緒に揃えたいもの 2選
本項目ではアトムビレイロックと一緒に揃えたいものを2つ紹介します。
ペツル社のビレイデバイス:ルベルソ
最初に紹介するのは、ペツル社のビレイデバイス「ルベルソ」です。
筆者は3つのビレイデバイスを使ってきたのですが、最初からルベルソを買えばよかったと、少し後悔しています。
ルベルソのおすすめポイントは以下のとおりです。
また、ルベルソがあれば以下のことが行なえます。
- シングルピッチのビレイ
- 懸垂下降
- 懸垂下降途中からの登り返し
- マルチピッチのセカンドビレイ
- ダブルロープ運用
シンプルなボディに多くの機能を詰め込んだ凄いヤツです。
シングルピッチのスポーツクライミングだけでなく、フリーのマルチピッチやアルパインにも興味があるという方は、絶対ルベルソを買ったほうが良いです。
なぜなら、ルベルソがあれば以上すべてのクライミングスタイルに対応できるからです。
それくらい素晴らしいギアですよ。
以上、ルベルソの紹介でした。
関連記事 ルベルソの詳細レビューはこちら
BD社のビレイデバイス:ATC-XP
アトムビレイロックと一緒に揃えたいもの、次に紹介するのはブラックダイヤモンド社のビレイデバイス「ATC-XP」です。
「ルベルソ」は優秀なギアですが、少しだけ値が張ります。
- フリーのマルチピッチやアルパインには興味がない
- または初期費用を抑えたい
という方は、シングルピッチのリードクライミング専門の「ATC-XP」をおすすめします。
ATC-XPは上下を反転されることでハイフリクションモードとローフリクションモードを切り替えられます。
ゆえに、体重差がある人をビレイするのに役立ちます。
(ちなみにこの機能は「ルベルソ」にも備わっています)
ビレイデバイスに関しては、ご自身のクライミングスタイルにあわせて取捨選択していただければ幸いです。
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カンプ アトムビレイロック レビューまとめ
「アトムビレイロック」は個人的にはほぼ完璧で、点数をつけるとしたら97点なスクリュータイプのHMS型(洋ナシ型)安全環付きカラビナです。
アトムビレイロックは初心者さんにも経験者さんにも強くおすすめできる逸品ですので、ビレイ用の安全環付きカラビナをお探しの方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
以上、アキラでした。