マルチピッチクライミングや、クライミング要素の強い登山をやるときのギアとして、セルフビレイコードがあります。
- セルフビレイ(自己確保)するときの必需品
- さまざまな製品がある
- 自作することも可能
そんなセルフビレイコードですが、製品や素材ごとに異なる特徴があったりします。
中には、特徴をしっかり理解して使わないと命に関わることも…。
この記事では、私が使ってきた3本のセルフビレイコードの紹介を通して、
- 各セルフビレイコードの特徴と注意点
- 結局どれがおすすめなの? → ペツルのコネクトアジャスト
を解説していきます。
※記事の内容を少し先出しすると、各セルフビレイコードには以下のような特徴があります。
個人的に一番のおすすめはペツルのコネクトアジャストです!
自作 コード |
PAS | コネクト アジャスト |
|
重さ |
93g | 89g | 127g |
長さ (最長) |
120cm | 97cm | 95cm |
長さ調整幅 |
2段階 | 6段階 | 無段階 |
クリップの 素早さ |
△ | ◯ | △ |
確保支点での 作業性 |
✕ | △ | ◎ |
総合的な 操作性 |
✕ | △ | ◯ |
現場での 応用性 |
△ | ◎ | △ |
素材 | 伸びない 素材 |
伸びない 素材 |
伸びる 素材 |
詳しくは記事内で解説しますので、興味がある方はぜひ読み進めてみてくださいね。
それではいってみましょう。
その前に、簡単に私の自己紹介
- 趣味でクライミングをやっている会社員クライマー
- クライミング歴は7年以上
- 晴れた日のマルチピッチクライミングを好む
- アルパインクライミング(夏)の経験は一度だけあり
- 沢登りや雪山、アイスクライミングは未経験
簡単にですが、以上が私の自己紹介です。
これくらいのクライマーが書く記事としてお読みください。
セルフビレイコードにおける伸びない素材と伸びる素材について
クライミングで使われるロープやコードには、大まかなカテゴリー分けとして、
- 伸びないもの(スタティック)
- 伸びるもの(ダイナミック)
以上の2種類があります。
確保に使うロープは”伸びるもの”です!
伸びることによって支点や体にかかる衝撃を和らげるという仕組みです。
”伸びない”素材でできたセルフビレイコードは、墜落時にかかる衝撃が大きいという安全上の注意点があります。
なので私は、”伸びる”素材で作られたセルフビレイコード(ペツルのコネクトアジャスト)を好んで使っています。
さて、ここからは「これまで私が使ってきたセルフビレイコード3本の紹介と解説」をしていきます。
ナイロンスリングで自作したセルフビレイコード
最初に紹介するのは、ナイロンスリングで自作したセルフビレイコードです。
私がマルチピッチを始めたばかりの頃にやっていた方法です。
リーズナブルというメリットはありますが、
- 操作性が悪い
- 墜落時にかかる衝撃が大きい
というデメリットがあるため、正直あまりおすすめできません。
作り方
作り方については、上の動画がとても参考になります。
- 120cmのナイロンスリング
- 安全環付きカラビナ
の2つがあれば1本のセルフビレイコードの作成が可能です。
私が使っていた製品は以下のとおり。
この製品の組み合わせなら、2,500円ほどで1本のセルフビレイコードを作成できるため、費用面で優れたやり方になります。
特徴と注意点
安全環付きカラビナを除いた重量は93gです。
(これは、使用するスリングによって変動します)
- ◯:リーズナブル
- △:2段階の長さ調節
- △:墜落衝撃が大きい”伸びない”素材でできている
- ✕:携行中にねじれてしまう
- ✕:中間の穴にカラビナを通しにくい
- ✕:両手で操作する必要がある
ナイロンスリングで自作したセルフビレイコードの特徴と注意点は以上のとおり。
自作のセルフビレイコードは、ハーネスへのラッキングがやりにくい点が特に気になりました。
中間の穴にカラビナを通すのが片手では難しく、両手を使わないとラッキングできないシーンが多かったです。
マルチピッチでは不安定な場所で作業するので、ギアはなるべく片手で操作できるのが望ましいところ。
「マルチピッチを続けるか分からないし、とりあえずこれでいいか。」と試した方法でしたが、使い勝手はイマイチでした。
あまりおすすめできません。
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メトリウス PAS(パス)
ナイロンスリングで自作したセルフビレイコードは操作性がイマイチだったため、セルフビレイ専用の製品を導入しました。
それが、メトリウスのPAS。
PASは「パーソナル・アンカー・システム」の略です!
私がマルチピッチクライミングを始めた頃(2014年)からセルフビレイコードとしての定番商品でした。
PASは「ナイロンスリングで自作したセルフビレイコード」に対して感じていた使いづらさをすべて解決してくれました。
特徴と注意点
PASの重量は89gです。
本記事で紹介している3本のセルフビレイコードの中では、最軽量です。
- ◯:6段階の長さ調節が可能
- ◯:ハーネスへのラッキングがスムーズ
- ◯:水濡れや凍結に強いダイニーマ製
- ◯:すべてのループに22kNの強度がある
- ◯:工夫次第でいろいろな使い方ができる
- △:カラビナのゲートを開けないと長さ調節ができない
- △:墜落衝撃が大きい”伸びない”素材でできている
PASの特徴と注意点は以上のとおりです。
ナイロンスリングで自作したセルフビレイコードに比べると使い勝手が良く、マルチピッチにおける快適性はとても向上しました。
しかし、安全環付きカラビナのゲートを開けないと長さ調節ができない点が気になりました。
マルチピッチ始めたての頃は”ちょうどいい”セルフビレイを取るのが難しく、掛けかえや長さ調節がどうしても発生します。
そのときに「カラビナのゲートを開けて長さ調節する」というのはリスクがあるので、なるべく避けたいと感じました。
(カラビナを2枚使うという手もありますが、その分ギアが増えるので、スマートではありません。)
PASは、マルチピッチに慣れてきた頃に真価を発揮するクライミングギアという印象です。
”伸びる”素材でできた「ダイナミックPAS」という製品も販売されています。
ペツル コネクトアジャスト
PASを導入することでマルチピッチでの快適性は向上したのですが、「ゲートを開けずに長さ調節ができる製品はないかな?」と考え、それを叶えるセルフビレイコードを探していました。
そんなときに販売が開始されたのが、ペツルのコネクトアジャスト。
「どのセルフビレイコードがおすすめ?」と問われたら、私はコネクトアジャストと答えます。
その理由は下記のとおり。
- ゲートを開けずに長さ調節が可能
- 墜落衝撃を和らげる”伸びる”素材でできている
特徴と注意点
コネクトアジャストの重さは127g。
本記事で紹介している3本のセルフビレイコードの中では最も重いです。
- ◯:ゲートを開けずに無段階の長さ調節が可能
- ◯:ハーネスへのラッキングがスムーズ
- ◯:墜落衝撃が和らぐ”伸びる”素材でできている
- △:コードの繰り出しがやや重い
- △:シングルロープとの取り間違えに注意
コネクトアジャストの最大の魅力は、カラビナのゲートを開けなくても無段階の長さ調節ができること。
支点にクリップしたあと、「やっぱりちょっと長さを変えたいな」というときにとても便利です。
注意点について補足すると、コネクトアジャストと同じくらいの太さのロープをメインロープとして使う場合、触った感触が似ているため、取り間違えにはご注意を。
また、支点にクリップするときには、グググッと伸ばしてやる必要があるため、それが少し煩わしく感じることがあります。
素早いクリップを求めるならPASの方がおすすめです。
追記:新しいコネクトアジャスト(青色)はロープ経が細くなり、そのぶんスムーズに伸ばせるようになりました。
コネクトアジャストは、本記事で紹介してきたセルフビレイコードの中で唯一、”伸びる”素材で作られています。
足を滑らせ、少し落ちただけでも体に受けるダメージは結構大きいものです。
”伸びる”素材でできたコネクトアジャストは、落下衝撃が緩和されるので安全性が高いです。
まとめると、コネクトアジャストは確保支点での作業性と安全性が高いセルフビレイコードという一文になります。
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各セルフビレイコードの特徴と注意点 まとめ
本記事は「「結局どれがいいの?」セルフビレイコード3種比較とおすすめ製品。」について書きました。
各セルフビレイコードの特徴は以下のとおりです。
自作 コード |
PAS | コネクト アジャスト |
|
重さ |
93g | 89g | 127g |
長さ (最長) |
120cm | 97cm | 95cm |
長さ調整幅 |
2段階 | 6段階 | 無段階 |
クリップの 素早さ |
△ | ◯ | △ |
確保支点での 作業性 |
✕ | △ | ◎ |
総合的な 操作性 |
✕ | △ | ◯ |
現場での 応用性 |
△ | ◎ | △ |
素材 | 伸びない 素材 |
伸びない 素材 |
伸びる 素材 |
私にとって安全性の高いギアとは、ペツルのコネクトアジャストでした。
マルチピッチクライミングはリスクの高い遊びなので、ギアはなるべく安全性の高いモノを使うことを推奨します。
墜落時の衝撃が緩和されるという点もモチロンですが、確保支点での作業性の良さも行動時間の短縮につながります。
コネクトアジャストは衝撃吸収性と作業性が両立した良いクライミングギアなので、セルフビレイコード選びにお悩みの方は検討してみてはいかがでしょうか?
以上、アキラでした。