外岩でリードクライミングを楽しむにはクイックドロー(ヌンチャク)が必要です。
ただ、一口にクイックドローといってもたくさん種類があります。
結局どれを選べばいいの!?
と、お困りではないですか?
本記事では、これからクイックドローを揃えるという方に向けて、
をご紹介します。
この記事を書く私はリードクライミング歴5年以上の愛好家。
昔、クイックドロー選びで考慮するポイントを知らなかった私は、イマイチなクイックドローを購入してしまいました。
そのとき学んだことも踏まえて記事を書いていきます。
先におすすめ製品を知りたい場合は「おすすめのクイックドロー5選 」からチェックしてみてください。
結論から言うと、ブラックダイヤモンド社の「ホットフォージクイックパック」が特におすすめです。
総合力の高いクイックドローパックです!
クイックドローを選ぶ前に
使用シーンを定める
リードクライミングといってもその形態はさまざまです。
スタイルによってクイックドローに求める要素も変わってきます。
本記事では、リードクライミングを以下2つのスタイルに分けて解説していきます。
- シングルピッチのスポーツクライミング
- アルパインクライミング(マルチピッチ)
シングルピッチのスポーツクライミング
「シングルピッチのスポーツクライミング」とは、クライミングジムで行うような、1ルートの難易度を求めるクライミングのことです。
ときにはシビアなクリップが必要だったり、スリングを掴んで作業したりすることもあるので、以下の点を備えたクイックドローが適しています。
- クリップしやすいこと
- 総じて扱いやすいこと
(スリングが掴みやすい、ロープが引っかかりにくい等)
シングルピッチのリードクライミングに必要な道具については別記事にまとめました。
よかったらチェックしてみてくださいね。
アルパインクライミング(マルチピッチ)
「アルパインクライミング(マルチピッチ)」とは、山岳登攀の要素を含んだクライミングのことを指します。
沢登りやアイスクライミング、フリーのマルチピッチもこのカテゴリに入れさせてもらいました。
たくさんの荷物を背負って長時間行動するため、装備は軽量であることが望ましいです。
- 軽いこと
- 扱いやすいとなお良い
大切なのはスタイルを決めること
- シングルピッチのスポーツクライミング
- アルパインクライミング(マルチピッチ)
リードクライミングを以上2つのスタイルに分けました。
大切なのは「自分がどんなクライミングをやりたいのか」を考え、決めることです。
それが曖昧な方は、少し立ち止まって、自分がもっともやりたいクライミングスタイルを考えてみてください。
クイックドロー選びはそれからでも遅くありませんよ。
私の場合は「シングルピッチのスポーツクライミング」でした!
クイックドロー選びの6ポイント
ここからは「クイックドロー選びの6ポイント」を解説していきます。
クイックドロー選びでチェックしたいポイントは以下の6つ。
- 軽いこと
- パック製品があること(安いこと)
- カラビナに段差がないこと
- ノーズがスリムなこと
- スリングが掴みやすいこと
- 長さのラインナップがあること
ひとつずつ解説していきます。
軽いこと
軽いは正義です。
クイックドローが軽ければ軽いほど、運搬や登攀時の負荷は小さくなります。
長時間行動をともなうアルパインクライミングでは特に重視したい要素です。
パック製品があること(安いこと)
パック製品があるクイックドローは、1本あたりの価格が安くなってるため、出費を抑えられます。
リードクライミングはクイックドロー以外にも揃えるものが多いので、節約するに越したことはありません。
買い物はなるべく安く済ませたいですよね。
ノーズがスリムなこと
カラビナのノーズは、上の写真のようにスリムなものがおすすめです。
ノーズが太いと、
- 穴の小さいハーケン
- 岩の凹部にある支点
- 鎖の輪っか
などにクリップできないことがあります。
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▲ ノーズが太いと、終了点の鎖部にクリップできず、不便に感じるシーンがあります。
以上より、「カラビナのノーズの形状」はチェックすべきポイントです。
カラビナに段差がないこと
カラビナに段差があるクイックドローは、ロープや支点に引っかかることがあるためイマイチです。
引っかかるとけっこうイラッとしますし、なにより対処が面倒なので、私は段差がないカラビナを好んで使っています。
段差がない滑らかなカラビナなら、引っかかりによるストレスを受けません。
「カラビナに段差がないこと」は、クイックドロー選びにおいて、個人的にかなり重視しているポイントです。
段差を廃したカラビナのことを、”キーロックシステムを採用したカラビナ”といいます。
スリングが掴みやすいこと
スリングが太く、掴みやすいクイックドローは便利です。
スリングを持ってクリップしたり、クイックドローを使った登攀にも重宝します。
太いスリングはねじれづらく、安全性が高いのもポイント!
長さのラインナップがあること
クイックドローは、ロープの流れをスムーズにするため、そのつど適切な長さのモノをセットします。
なので、長さのことなるクイックドローは必須です。
長さにラインナップがあるクイックドローなら、ロープの流れを考慮したセットができますし、装備に統一感も持たせられます。
せっかくなら装備を統一したいという方は「長さのラインナップがあるか?」についてもぜひチェックしてみてください。
まとめ
本項目のまとめです。
クイックドローを選ぶときのポイントは次の6つ。
- 軽いこと
- パック製品があること(安いこと)
- カラビナに段差がないこと
- ノーズがスリムなこと
- スリングが掴みやすいこと
- 長さのラインナップがあること
ぜひ参考にしてみてくださいね!
筆者がはじめて購入したクイックドローはイマイチだった
こちらは筆者がはじめて購入したクイックドロー、「フードワイヤー」です。
数年前に購入して以降、使い続けています。
ただぶっちゃけコレ、イマイチでした。
その理由は次のとおり。
・カラビナのノーズがとても太い
・スリングが細く、掴みにくい
・重量が中途半端
特にノーズの太さが致命的でした。
簡単にご説明します。
上は、のちに紹介する「スピリット エクスプレス 」との比較画像になります。
画像からも分かるように、フードワイヤーはノーズがとても太いです。
各部の長さは以上のとおり。
普通の支点なら問題ないのですが、たとえば鎖の輪っかにクリップしようとしたときに、フードワイヤーだと入らないことが多々あります。
当時はアイスクライミングにも興味があり、いろいろなシーンで使えるクイックドローを探してました。
厚手のグローブを着けていても操作しやすいよう、軽量かつ大きめなカラビナが良いと考え、「フードワイヤー」に行き着いたのです。
その結果、「クイックドロー選びの6ポイント 」から大きく外れた製品を選んでしまいました。
(当時はクイックドロー選びの6ポイントを知らなかったという背景もありますが…)
重量は約84gと軽量ですが、もっと軽いクイックドローもあるため、どこか中途半端。
というエピソードでした。
アイスクライミングは結局やってません…。
次の項目からは、おすすめのクイックドローの紹介に入ります。
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2024年 おすすめのクイックドロー 5選
クイックドローを選ぶときにチェックしたいポイントは次の6つです。
- 軽いこと
- パック製品があること(≒安い)
- カラビナに段差がないこと
- ノーズがスリムなこと
- スリングが掴みやすいこと
- 長さのラインナップがあること
ただ残念ながら、上記のポイントをすべて満たすクイックドローはありません。
なので、あなたがやりたいクライミングスタイルに合わせて要素を取捨選択する必要があります。
︙
最新モデルの中から「クイックドロー選びの6ポイント」に沿った製品を集めました。
それがこちらの5製品!
次の項目からは、解説を交えつつ、それぞれの特徴を紹介していきます。
ホットフォージクイックパック
最初に紹介するのはブラックダイヤモンド社の「ホットフォージクイックパック」です。
総合的にコレが一番おすすめ!
- 軽いこと
- パック製品があること(≒安い)
- カラビナに段差がないこと
- ノーズがスリムなこと
- スリングが掴みやすいこと
- 長さのラインナップがあること
ホットフォージクイックパックは、「クイックドロー選びの6ポイント」の内、5つを満たしています。
製品情報はこんな感じ。
ホットフォージクイックパックの製品情報 | |
セット本数 | 6本 |
1本あたりの重さ | 約103g |
長さ | 12cm |
長さのラインナップ | 12cm / 16cm |
関連製品 | ホットフォージ(16cm) |
備考 |
|
「ホットフォージクイックパック」は、総合力の高いパックです。
ロープをクリップする側のカラビナゲートが一部フラットになっており、クリップしやすいように設計させています。
これは、のちほど紹介する「スピリット エクスプレス 」にも施されている加工です。
数年前にブラックダイヤモンド社が製造していたリーズナブル帯のクイックドローって、「安いかわりに扱いやすさはイマイチ…」という印象でした。
しかし、いま販売されている「ホットフォージクイックパック」はとても良いです。
時間をかけてブラッシュアップされてきた結果なのでしょう。
ノーズはスリムだし、スリングも太くて掴みやすい!
もし私がクイックドローを揃え直すとしたら、確実にホットフォージクイックパックを選びます。
スピリット エクスプレス
次に紹介するのはペツル社の「スピリット エクスプレス」です。
プロクライマーの野口啓代さんと、安間佐千さんも使っているクイックドローになります。
予算に余裕があるならコレ!
- 軽いこと
- パック製品があること(≒安い)
- カラビナに段差がないこと
- ノーズがスリムなこと
- スリングが掴みやすいこと
- 長さのラインナップがあること
スピリット エクスプレスは、「クイックドロー選びの6ポイント」の内、4つを満たしています。
製品情報はこんな感じ。
スピリット エクスプレスの製品情報 | |
長さのラインナップ | 11cm / 17cm / 25cm |
1本あたりの重さ | 約89g(11cm) / 約95g(17cm) / 約104g(25cm) |
関連製品 | スピリット エクスプレス(17cm) スリピット エクスプレス(25cm) |
備考 |
|
「スピリット エクスプレス」は、シングルピッチのスポーツクライミングにおいて最強なクイックドローです。
その最強なところをいくつかピックアップしてお伝えしていきます。
上の写真を見ると、ロープ側のカラビナゲートがフラットになっているのが分かります。
これは、スムーズにクリップするための加工です。
ゲートをフラットにすることで、ロープとの接地面積が増えます。
その結果、ロープが安定し、クリップしやすくなるという仕組みです。
いくつかのクイックドローを試してきた筆者ですが、本製品がもっともクリップしやすいと感じました。
クリップ性能ナンバーワン!
スリングは太く、掴みやすいです。
スリングを持って作業するときに、とても役立ちます。
ねじれづらく、安全面も良好。
長さのラインナップが豊富なところもイケてます。
価格は高めですが、その価値があるクイックドローです。
ミニワイヤークイックパック
3つ目に紹介するのはブラックダイヤモンド社の「ミニワイヤークイックパック」です。
軽さを求めるならコレ!
- 軽いこと
- パック製品があること(≒安い)
- カラビナに段差がないこと
- ノーズがスリムなこと
- スリングが掴みやすいこと
- 長さのラインナップがあること
ミニワイヤークイックパックは、「クイックドロー選びの6ポイント」の内、3つ(※)を満たしています。
(※ノーズの幅は程々といったところ。筆者がはじめて購入したクイックドローよりは細いです)
製品情報はこんな感じ。
ミニワイヤークイックパックの製品情報 | |
セット本数 | 6本 |
1本あたりの重さ | 約55g |
長さ | 12cm |
長さのラインナップ | 12cm / 60cm |
関連製品 | ミニワイヤーアルパインドロー |
備考 |
|
「ミニワイヤークイックパック」の魅力は圧倒的な軽さ。
1本55gと、最初に紹介したホットフォージクイックドローの半分程度の重さしかありません。
(55gってどれくらいかというと、卵1個と同じくらいの重さです)
ゆえに、「長時間の歩行を伴うアルパインクライミング」や、「大量のギアが必要なマルチピッチ」といった、装備を軽量化したいときに重宝します。
そのかわり、スリングが細くて掴みにくいなど、使い勝手はイマイチに感じるかもしれません。
とはいえ、1本55gはやっぱり魅力的。
軽さを追求したい人におすすめなクイックドローです。
ジン アクセス
4つ目に紹介するのはペツル社の「ジン アクセス」です。
スリング太めのタフなヤツ!
- 軽いこと
- パック製品があること(≒安い)
- カラビナに段差がないこと
- ノーズがスリムなこと
- スリングが掴みやすいこと
- 長さのラインナップがあること
ジン アクセスは、「クイックドロー選びの6ポイント」の内、5つを満たしています。
製品情報はこんな感じ。
ジン アクセスの製品情報 | |
セット本数 | 6本 |
1本あたりの重さ | 約107g |
長さ | 12cm |
長さのラインナップ | 12cm / 17cm |
関連製品 | ジン アクセス(17cm) |
備考 |
|
「ジン アクセス」はペツル社が製造/販売しているクイックドローです。
このクイックドローは、「ホットフォージクイックパック」が発売される前に筆者が購入を検討していた製品になります。
以前はカラーが落ち着いた灰色でクールだったのですが、あるタイミングから水色と紫に変わりました。
灰色が欲しかった筆者としては少し残念です。
さて、「ジン アクセス」は仲間が所有しているため、何度か使わせてもらったことがあります。
同社の「スピリット エクスプレス」とはことなり、ロープ側カラビナはフラットではありません。
かわりにゲート開口部が広いです。
使ってみたところ、「これはこれでクリップしやすいなぁ」と感じました。
スリングは太く、高い耐久性を有しています。
仲間の「ジン アクセス」はかなり使い込まれていましたが、スリングが千切れそうな不安感は全くありませんでした。
ペツルの製品にハズレなし!
お得な6本パックもあるので、候補のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか?
アンジュ フィネス
最後に紹介するのはペツル社の「アンジュ フィネス」です。
「アンジュ」がカラビナの名前、「フィネス」がスリングの名前となっています。
アルパインクライマーの佐藤裕介さん、プロクライマーの野口啓代さんも使っている製品です。
アルパイン志向なアナタに!
- 軽いこと
- パック製品があること(≒安い)
- カラビナに段差がないこと
- ノーズがスリムなこと
- スリングが掴みやすいこと
- 長さのラインナップがあること
アンジュ フィネスは、「クイックドロー選びの6ポイント」の内、5つ(※)を満たしています。
(※ノーズは「スピリット エクスプレス」よりも少し太めです)
カラビナはSとLの2サイズがラインナップされており、用途によって選択できます。
製品情報はこんな感じ。
アンジュ フィネスの製品情報 | |
長さのラインナップ | 10cm / 17cm |
1本あたりの重さ | 約63g(10cm) / 約66〜78g(17cm) |
関連製品 | アンジュS+S フィネス(17cm) |
備考 |
|
ラインナップは以下のとおりです。
アンジュ フィネスのラインナップ | ||
スリングの長さ | カラビナ | 重量 |
10cm | ・アンジュS ・アンジュS |
約63g |
17cm | ・アンジュS ・アンジュS |
約66g |
17cm | ・アンジュS ・アンジュL |
約72g |
17cm | ・アンジュL ・アンジュL |
約78g |
「アンジュ フィネス」はアルパインクライミングに特化したクイックドロー。
現場での扱いやすさを確保しつつ、重量にもこだわった逸品です。
軽量なクイックドローとして紹介した「ミニワイヤークイックドロー」は、スリングが掴みづらいなど、使い勝手という面ではイマイチでした。
一方、アンジュ フィネスは、
- カラビナに段差がない
- ノーズがスリム
- スリングが太く、掴みやすい
といった、扱いやすいクイックドローの特徴を有しています。
最軽量セット(10cm/アンジュS+アンジュS)の重さは約63gと、約55gのミニワイヤークイックドローに8g足しただけです。
また、スリングが太いのもイチオシポイントとなっています。
この軽さでスリングが太いクイックドローって珍しいです。
アルパインでは、支点にクイックドローをかけ、スリングを握って登るという登攀方法(エーゼロといいます)を取ることがあります。
そのときに、スリングが細くて掴みづらいと登りにくいのです。
以上より、「アンジュ フィネス」はアルパイン特化型のクイックドローと言えます。
値は張りますが、アルパインを志向する方にとって選択肢となり得る製品です。
各クイックドロー比較表【特徴/価格】
製品 | 特徴 |
ホットフォージ クイックパック |
・主要用途はスポーツ |
スピリット エクスプレス |
・主要用途はスポーツ |
ミニワイヤー クイックパック |
・主要用途はアルパイン |
ジン アクセス |
・主要用途はスポーツ |
アンジュ フィネス |
・主要用途はアルパイン |
簡単な比較表を作ってみましたので、よかったらご活用ください。
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クイックドローは何本必要か? ⇒ 8〜10本
「クイックドローは何本必要か?」という問いに対して、残念ながら答えはありません。
なぜなら、ルートによって必要となる本数が違うからです。
ただ、そう言い切ってしまうと元も子もないので、私なりの指標をお伝えします。
私の肌感覚としては、8本〜10本程度あればよっぽど大丈夫だと感じています。
内訳としては下記のとおり。
・短いクイックドロー:6本
・長いクイックドロー:2本
・短いクイックドロー:7本
・長いクイックドロー:3本
足りない分はパーティで補いつつ、リードクライミングを楽しみましょう。
リードクライミングでおすすめなクイックドロー 5選 まとめ
本記事は「【2024年】リードクライミングでおすすめなクイックドロー 5選!」について書きました。
筆者イチオシは、ブラックダイヤモンド社の「ホットフォージクイックパック」です。
クリップしやすく、スリングも掴みやすい。
それでいて比較的リーズナブルなのが魅力です。
クイックドローは不定期でカラーが変更になったり、製品そのものがバージョンアップされたりします。
そうなると旧バージョンは買えなくなるので、装備を統一したい方はご注意ください。
私はノンビリしていたら、狙ってたクイックドロー(ジン アクセス)のカラーが廃番になってしまいました。
なので、一度に「えいや!」と揃えてしまうこともおすすめします。
リードクライミングは世界が広がる遊びなので、クイックドローを揃えて、ぜひ飛び込んでみてくださいね。
本記事がクイックドロー選びの参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!